大腸ポリープとは【大腸がん予防】
大腸ポリープとは、大腸の内腔に向かって限局性に隆起する病変の総称で、組織学的に必ずしも「がん」を意味するものではありません。
ポリープにはさまざまな種類があり、性質やがん化リスクも異なります。
主な分類は次の通りです:
腫瘍性ポリープ
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通常型腺腫(conventional adenoma)
良性の腫瘍性ポリープで、がんの前段階(前がん病変)とされます。
中でもよく見られるのが「low-grade tubular adenoma(低異型度管状腺腫)」で、細胞の異常(異型性)は軽度ですが、
経過とともに「高度異型腺腫(high-grade)」や「がん」に進行する可能性があるため、内視鏡で切除することがすすめられます。 -
鋸歯状病変(serrated lesions)
鋸歯状の細胞構造を持つ病変で、以下に分類されます:- 過形成性ポリープ(HP):非腫瘍性でがん化リスクは低い
- SSL(Sessile Serrated Lesion):腫瘍性で前がん病変
- TSA(Traditional Serrated Adenoma):まれだががん化リスクが高い
このように、通常型腺腫や一部の鋸歯状病変(SSLやTSA)は「前がん病変」とされ、がん予防の観点からも切除が強く推奨されます。
大腸がんになる前に
科学的根拠に基づく大腸がんのリスクと予防
- 腺腫が前がん病変であることは多数の研究で確立されています(参考:New England Journal of Medicine, 2012)。
- 高リスク因子には以下が挙げられます:
- 加齢(特に50歳以上)
- 男性
- 喫煙・飲酒習慣
- 肥満・運動不足
- 赤身肉・加工肉の過剰摂取
- 家族歴(大腸がん患者が近親者にいる)
- ポリープ切除により、大腸がん死亡率は53%低下(Zauber AG, N Engl J Med, 2012)
当院では、こうした知見に基づき、ポリープの早期発見と日帰り切除を通じて、地域における大腸がん予防に積極的に取り組んでいます。
日帰り大腸ポリープ切除術
当院での切除方法
- CFP(Cold Forceps Polypectomy):小さなポリープを鉗子で摘除。リスクが低く、患者の負担も少ない方法です。
- CSP(Cold Snare Polypectomy):通電せずにスネア(ワイヤー)でポリープを切除。安全性が高く、比較的小さなポリープに適応されます。
- EMR(Endoscopic Mucosal Resection):ポリープの下に生理食塩水などを注入して粘膜を隆起させ、スネアで通電させて切除する方法。中程度以上の病変に適応されます。
ポリープの大きさ・形・個数・部位などにより、当院で安全に日帰り切除できるかを慎重に判断いたします。
状況に応じて、より専門的な治療が可能な医療機関をご紹介させていただく場合もあります。
止血とリスク管理について
切除後には、出血や穿孔(腸に穴が開くこと)などの合併症のリスクがあります。
そのため、当院では必要に応じて止血クリップを使用し、切除部位を閉鎖することでリスクの低減を図っています。
- 出血の発生率は全体の約0.3〜1%とされており、多くは内視鏡的に止血可能です。
- 穿孔の発生率は0.1〜0.3%程度で、ほとんどが内視鏡的または保存的に対応可能です。
(参考:日本消化器内視鏡学会『日常診療に役立つ大腸内視鏡診療ガイド』2020年版)
日帰り手術のメリット
- 検査と治療を同日に完了
- 入院不要で時間的・経済的負担を軽減
- 迅速な治療によりがん予防が可能
ポリープの性質は病理検査により確定します。切除時点では外見のみで判断するため、すべての病変を安全に切除・病理評価することが重要です。
参考文献・ガイドライン
- 大腸癌研究会編『大腸ポリープ診療ガイドライン2020』
- 日本消化器内視鏡学会『日常診療に役立つ大腸内視鏡診療ガイド』
- Nishihara R, et al. N Engl J Med 2013; 369:1095-1105
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切除術後の注意点
ポリープ切除後は、食事制限や腸内洗浄による低血糖・脱水状態になっている場合があります。
ご帰宅前に、糖分や水分の補給を必ず行っていただきます。
ご自宅では以下の点にご注意ください:
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食事
ポリープの大きさや形状、個数によって異なりますが、術後2〜4日間は安静期間とし、
お粥・うどん・ゼリーなど消化の良いものをお召し上がりください。
刺激物(香辛料、アルコール)や油っこいものは控えてください。 -
アルコール
炎症や出血を誘発する可能性があるため、術後1週間は禁酒をお願いします。 -
入浴
術後2〜3日はシャワーのみとし、長風呂やサウナの利用は禁止です。 -
運動
腹圧がかかる運動(ジョギング・水泳・ゴルフ・筋トレなど)は、術後1週間程度控えてください。
ご帰宅後の異変に対する対応
ごく稀に出血・腹痛・発熱などが生じることがあります。
当院では、すべての患者様に24時間365日対応の緊急連絡先をお伝えしており、
万が一の際にも迅速に対応できる体制を整えております。
また、緊急時に他院でも使用できる診療情報提供書をお渡ししておりますので、
受診・処置が必要な際もスムーズな対応が可能です。
ご安心のうえで検査・治療をお受けください。